「人生は泥臭い。」自分が大学生活4年間、ソフトテニス部という場所で学んだことはこの一言に尽きる。大学生活のたった4年間で人生がこんなものかと達観しているのも少々滑稽に思えるが、自分なりに真剣に向き合ったからこそ得た答えだと信じている。ソフトテニス部という場所は、自分がどれほど泥臭いことを嫌う弱い人間であるかを教えてくれた。社会に放り出される前に、ソフトテニス部での活動を通じて自分の弱さを認識できた。そしてこの気づきを与えてくれたのは、ソフトテニス部という場所、ソフトテニスに関わる全ての人、同期、先輩、後輩、OBOGの方々であり、自分がこの部活動に未熟なりに向き合った結果であると思っている。

 

 ソフトテニスが好き、チームで戦うのが好き。ただそれだけで4年間ソフトテニスを続けてきた。1、2年の時はただ好きなテニスをしたくて毎日のようにコートに通った。しかし、そこに泥臭さはなかった。そこにテニスに関して絶対に負けたくない理由、絶対に勝ちたい理由はなく、工夫して練習し続けるようなこともなく、好きなテニスをひたすらして練習量に助けられ少しずつ上手くなっていくだけ。思考停止のままテニスをしていた。そして、不幸にも自分は1年の春からリーグ戦に出場し、レギュラーから外されることもなかった。まだ下級生だから勝ちにこだわらなくて良い、その試合を楽しんで経験を積んでくれ、当時の先輩からはそう言われ、ただ表面的な闘志を燃やし、大声で喜び、言葉の通り楽しんだ。チームのムードメーカーとして暴れまくっていればそれだけで評価され、その立場に甘んじた。リーグ戦で負けても、1年生だからしょうがない、2年生でも2勝、3勝できれば万々歳というような感じで、強烈に勝ちたい、絶対に優勝したいという感情、逆にレギュラーから外れる危機感のようなものもなく、心の底から湧き上がる「何か」もあまりなかった。

 

 そんな自分は、主将に選ばれた。もともと、人の前に立つのは好きだし、主将になると自然と責任感を持つようになった。当時の部活に対する課題や問題にフォーカスし、部活を変えるために様々なことに取り組んだ。しかし、そこで自分に足りなかったのはやはり「泥臭さ」であった。自分に中途半端であった。チーム全体を見なければならないと自分に言い訳をしながら、自分のプレーに向き合うことをやめた。チームが大事だと言いながらチームに自分の力を全て使い果たせたかといえば、自信を持ってイエスとはいえない。中途半端だ。自分にもチームにも向き合い、自分の勝利のために、チームの勝利のためにいろいろなものを犠牲にして、誰もやりたがらないような仕事を自主的にしなければならない。どれだけ泥臭いことだろうか。何かを成し遂げるためには絶対に泥臭い何かを超えなければならない。振り返ると、自分はなんでも器用に、上手にやろうとする人間だと思う。そして、失敗を恐れ、失敗しないラインを攻めながら物事に取り組みがちだ。自分のキャパシティ以上のことに挑戦し、失敗し、それでも諦めず泥臭く果敢に取り組み続けて大きな成果を手にする人間とは真反対の人間を目指していたのかもしない。そんな器用で、スマートに成功をおさめることができるのは天才だけだ。自分のような凡人はひたすら泥臭い努力をしなければならない。当時の部活は何か行動することが評価され、結果に対して厳しく追求する人はいなかったし、そこに意識を向けることができなかったことは一つの大きな後悔である。結局、主将という役職も不完全燃焼であった。

 

 幹部を後輩に引き継いで、引退するまで結局、自分は泥臭いことから逃げてしまった。最後の最後まで、自分の挑戦できる限界までやり抜くことはできなかった。なんだか自分は部活に本気で向き合っていないように聞こえるかもしれないが決してそんなことはない。自分の中でずっと自分と戦っていた。その結果として、4年の秋リーグ、学生生活最後のリーグは1勝。1年の春からずっと出場してきたリーグ戦の中で一番勝ちが少なかった。最後のリーグに臨む際、なんとなくこんな結果になるような気がしていた。4年間の集大成のリーグ、自分に言い訳をして、泥臭いことから逃げてきた集大成がそのリーグの1勝だけだった。一方で、同期の板垣は最後のリーグで全勝賞。本当に尊敬している。

 

 心の底から湧き上がる「何か」を見つけることができなかったのだと思う。世間ではきっと「モチベーションの根源」などと言われているものだろう。強烈な「何か」が湧き出る大きな挫折や絶望、源体験がなかった。なぜ、「何か」に出会えなかったのかと考えると、やはり失敗から逃げてきたからだろう。

 

 この経験は今の自分にとって、とても大きなものだと信じている。この4年間で自分がどれほど情けない人間で、弱い人間か身を以て実感させられたのだ。自分は「失敗を避けて、失敗してこなかった」という部活人生における大きな失敗をした。そしてそれを大変後悔している。だから、これから先、自信を持って「失敗」に突進できるはずだ。人間は失敗して成長する。失敗から学び、同じ失敗をしないようにどうするのか試行し、成長する。

 

 

 

 後輩に伝えたいことはただ一つ。大学の部活って、真剣に取り組めば取り組むだけ成長できるし、そこで学べることや身についた力は将来絶対に役に立つということ。そしてこんな環境ってそうそうないということ。テニスが上手くなるも下手になるも自分次第。現状をより良くするにはどうすれば良いか考えて、アウトプットして、すぐに実行できて失敗して学んで成長できる環境はそうそうないということ。でもこの環境を使い尽くせるかどうかは自分次第。「真剣に」取り組むその真剣さの深さはとんでもなく深い。深ければ深いほど失敗するリスクも増えるし、失敗の程度も大きくなる。だからこそ、そこから泥臭く這い上がれば這い上がるほど学べることも自分に返ってくるリターンも大きくなる。だから、頑張れ。真剣に部活に向き合え。泥臭く。せっかく一橋大学ソフトテニス部という場所にいるのだから。向き合わなきゃもったいない。その先に部員としてではなく、人間としての大きな成長があるはずだ。

 

 

 

 最後になりましたが、コート内外で叱咤激励ならびに多くのご支援をいただいたOBOGの皆様本当にありがとうございました。学生で未熟な自分に様々なアドバイスをいただき、多くのものを吸収させていただきました。今後とも変わらぬご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。また、好き放題暴れた自分を受け入れて下さった先輩方、自分のことを多少は()慕ってくれた後輩、なんか仲悪いとか言われながらも好きな同期、本当にありがとうございました。先輩方がいらしたから、同期、後輩がいたからこそ今の自分があると思っています。結局ソフトテニス部は居心地がいいし、大好きです。一橋大学ソフトテニス部がますます発展することを願い、これからは自分も精一杯支援していきたいと思っております。