おじさんソフトテニス奮戦記

63年卒・直居敦

 夢には見ていたが、本気で実現するとは正直思っていなかった。 202110月、東京選手権シニア55の部、成蹊大学の1コ上OB 、荒井秀一さんと組んで3位入賞。準決勝敗退とはいえ、とにもかくにも夕方近くになったコートに最後までいて、賞状を受け取る気分の良さといったら格別だ。多分、自分のソフトテニス生活においてはLife Time High(=生涯最高成績)。この調子でしつこく続けていたら、「70歳くらいの頃には全日本レベルになれるのではなかろうか?」などと夢想するのもまた楽しい。

 

中学・高校・大学とソフトテニスを続けてきたものの、インターハイなどは夢のまた夢みたいな存在だった。大学時代はちょうどレベルがマッチして楽しく充実した軟式テニス部生活を送ったと思ってはいるが、はっきり言って“何とかの横好き”を自認している。大学卒業後、遊びで硬式テニスをする程度だったが、ちょっと物足りないような気がして、一橋大学の2コ下の中野君の誘いで何となくちょっと試合に出てみたのが40歳過ぎ。その直後、地元近くによい練習環境を見つけ、すぐにそちらのクラブチームに乗り換えた。何といっても自宅から自転車で5分の距離で、概ね土曜日、日曜日ともに練習できるのはありがたい。

 45歳を過ぎたころから東京選手権、関東大会のようなオフィシャルな大会に折々出場するようになった。しかし、これがなかなか勝てない。昔上手かった連中は今でもすごい球を繰り出してくるし、何より不可解なのは、こういった趣味のスポーツの試合で、負けたとしても社会的に何の影響もないはずの試合で、自分が緊張して力が出せないことだ……。情けない!

 

 2021年もわざわざ群馬まで前泊で出かけて行った東日本選手権であえなく1回戦、04で敗退するなど、個人としての成績はむしろ振るわない日々が続いていた。しかし、試合を重ねていればそれなりに学ぶこともある。歴戦のつわもの、ペアの前衛、荒井さんのアドバイスは「とにかく後衛は試合を作れ。あとは前衛が何とかする」ということだったように思う。もう少し具体的に言えば「苦しい時はセンターへのロビングでしのげ」ということか……。

 

 そうしてそれなりに精進して迎えた東京選手権。今思えば1試合目が山だった。それまでの殻を破って一歩抜け出すには、どこかで明らかに自分より強い相手を打ち負かさなければならない。相手ペアは関東、東日本レベルで何度も上位の成績をおさめている有名選手だったが、風が強い中、大して実績のない我々に少々油断してくれたのかもしれない。正直言って、自分では必死でつないでいただけであまり記憶がないのだが、後でペアや、見ていた仲間からは、「よく粘っていた」とお褒めの言葉をいただいた。

 とはいえ、いい歳をしてこうしたオフィシャルな大会に出てくる選手は、みなただ者ではない。そのあとも何とか接戦を制して、ついに準決勝進出。準決勝の相手は、神戸大学OBで同期の酒井さんのペア。自分が言うのも何だが、いい歳してよく練習する人で、この試合は強気の強打に撃ち負けて24で敗退と相成った。しかしまあよく頑張った、頑張った。

 

 そんなこんなでソフトテニスを続けているわけだが、この機会に3つほど感じていることを書き留めておこう。

   何といっても最高の気分転換

平日はテニスをする環境になく、それなりに仕事で忙しかったり、面倒くさい会社や(あるいは家庭まわりの)人間関係に疲れた後の週末、ソフトテニスで思いっ切り汗をかくのは最高の気分転換だ。その2時間、3時間は本当に我を忘れて庭球に興じる。まあ、肘が痛かったり、腰が痛かったりするけれど、健康面でも結構なプラスだろうと思う。

   気の置けない仲間たちとその広がり

地元近くで気のいい練習仲間に恵まれ、年齢も様々なのだが、仕事とは一切関係のない人間関係があるというのはなかなかに楽しいものだ。そして試合に出て行って、昨年みたいに少し勝ったりすると、広い世界でも次第に知り合いが増えてくる。「選手権見てましたよ。いい試合でしたね!」などと声を掛けられるとそれはもう有頂天です!次第に知り合いも増えてくるし、中には学生の頃以来の再開などもたまにあるのがまた嬉しかったりする。

   さらに上のレベルを目指すために

そうはいっても、欲も出る。それほど緻密ではないけれど、練習や試合の時に気が付いたことなどをメモしたりするなかで、昨年気が付いたのは「相手の嫌なことをする」ことがまだできない――ということだ。高校時代から名選手としてならしている同世代の友人と話していて本当にそう思ったのだが、安定的によい成績を残す選手は相手をみて自分の調子を判断しながら試合を“作っていく”。相手の癖や弱点を慎重に見極め、序盤は互角だったり、むしろ劣勢の試合を何とか勝ちまでもっていってしまうような強さがある。はっきり言って自分にはまだできない。緊張して自分のできることをするのに精いっぱいだからだ。少し余計なことを加えるなら、社会人として長年「人の嫌がることを極力しない」ことで生きてきた気がする(社会人として迫力不足な面があるとも感じるが……)。しかしソフトテニスは“ゲーム”だ。相手を見ながら弱点を突いたり突かれたり、互いに駆け引きできるようになれば、その面白さはずっと増すだろうと考えている。

 

 

 そんなこんなで自らのキャッチフレーズは“何とかの横好き”改め、“伸びしろのある50代”ということにした。まだまだいける!多分……。