4年秋、ソフトテニス部からの引退が決まった時感じたのは、達成感でもなければ後悔でもなく、どこかほっとしたような安堵感だった。この感情に私のソフトテニス部での4年間が集約されているように思う。ソフトテニスに魅せられて10年、最後まで下手の横好きだった。
振り返れば、中高を通じて思うように試合で勝てた記憶はほとんどない。それでもソフトテニスを続けていたのは、ソフトテニスが好きだという気持ちが大きかった。試合に負けることは多くても、時々やってくる勝利の喜び、思い通りのプレーができた時の快感が心地よかった。大学生になってもその心地よさを求めて、迷うことなくソフトテニス部への入部を決めた。1点決めるだけで沢山褒めてくださるような先輩方の優しさに、思い切りテニスができる喜びも相まってコートに行くのが楽しくてたまらなかった。
そんな折、チーム事情もあって幸運なことに春リーグに出場することになった。しかし鈍った体に付け焼刃の練習ではリーグで十分な働きなどできるはずもなく、初戦から試合中に頭が真っ白になり、ペアを組んでくださった先輩の足を盛大に引っ張った。先輩のお陰で結果こそ4戦で2勝だったが、惨めさと申し訳なさで一杯だった。春リーグでの不甲斐ない試合を経験し、秋リーグは絶対満足のいく試合をしたいと決意し練習に臨んだ。幹部の先輩方の施策に助けられながら、夏オフが終わる頃には「上達したね」と先輩から声を掛けていただけるくらい、それなりに充実した練習ができていたように思う。
秋リーグを終え4年生が引退されるとチームは大きく変わった。4人の4年生が抜けた穴はとても大きく、今のままでは8部残留すらままならないという危機感すら覚えた。この危機感を原動力に、チームに対して自分がどのように貢献できるか、かつてないほどに真剣に考え必死に練習に取り組んだ
迎えた2年の春リーグ、チームは8部優勝を達成することができた。優勝を決める最後の1ポイントを自分のプレーで決められたこともあって、チームの優勝に少しは貢献できたような気がした。そして臨んだ入れ替え戦、チームとしては負けてしまったものの、ペアの先輩のお陰もあって満足のいく最高の試合をすることができ、これまで1年間の練習の確かな手応えを感じることができた。
そして、この春リーグは大きな転機となった。それまでの3回のリーグ戦、私は常に先輩に引っ張ってもらいながらチームの勝利に貢献してきた。そしてこの春リーグで確かな手応えを掴んだことで、今度は自分が後輩を引っ張りチームの勝利に貢献したいと思うようになった。しかし結果として2年の秋から引退まで、リーグ戦では個人として1勝も挙げることができず、チームとしての勝利もわずか2勝にとどまった。
この2年の春リーグ後から引退までの期間は、チームに勝たせてもらう側からチームを勝たせる側に変わろうと必死にもがいた2年半だった。そこには単なる個人的な成長だけでなく、幹部として勝てるチームを作りたいという思いも含まれていた。しかし、実力ある先輩たちが引退されていく中で、自分たちが幹部になってからチームは全く勝てなかった。都国公立や練習試合にしてもあと一本が勝ち切れず、そんな時決まって負けているのは自分だった。チームが勝てない理由は、プレイヤーとしても幹部としても自分にあるのは明らかだった。なんとか勝ちたいと思ってあがいても、全てが足りなかった。変わりたいという思いは変われないという焦りになっていた。そして迎えた主将として、幹部としての唯一のリーグ戦、チームは1勝しかできず最下位に沈んだ。私は1勝もできなかった。結局自分は変わることができない。突きつけられた結果を消化できないまま4年目を迎えた。入部した頃は軽やかだったコートへの足取りは、いつしか重苦しいものへと変わっていた。そして引退が決まった9月、最後に感じたのは、もうテニスのことを考えなくていいのかという安堵感であった。
2年春までに8勝7敗、2年秋から引退までに0勝8敗。正直なんとも最低な終わり方である。その原因はひとえに自分の甘さにあると思っている。自分の最大の課題に気が付いておきながら、その解決の大変さ故にそこから目を逸らし、取り組みやすいものから手を付けていった。解決のための最大限の努力を怠り、取り返すことができないまま引退を迎えた。最後までテニスと部活に本気で向き合うことから逃げ続けた成れの果てである。本当に情けない話である。
ただ、終わり方こそ最低ではあったが、この部活に所属したことは間違っていなかったと思っている。この4年間の活動を通じ、沢山の素晴らしい人と出会い、幾多のかけがえのない経験をすることができた。テニスは入部した頃と変わらず下手なままだが、このソフトテニス部での4年間で良くも悪くも人間として少しばかりは成長することができたと思っている。
最後になりましたが、多くのご支援ならびにご指導を頂いたOB・OGの皆様に感謝申し上げます。また、活動ができない時期に励ましの声を掛けて下さった皆様、先輩方、後輩、仲が良いのか悪いのか分からない同期、お世話になった他校の皆さん、本当にありがとうございました。今後は私もOBとして後輩の一助となれるよう微力ながら支援して参りたいと思います。