「随想」

 

四年経 小泉裕亮

 

 

 

とうとう自分が随想を書く番になってしまった。私にとって先輩方の書かれた随想は、大学の体育会でソフトテニスをやる上でなくてはならないものであった。練習へのモチベーションが上がらない時やリーグ戦の直前には自分の気持ちを奮い立たせるために先輩方の随想を読んできたからだ。今回私自身が随想を書くにあたり、拙い文章ではあるが、少しでも後輩の参考になるようなことを書ければと思う。

 

振り返ってみると私の学生生活は常にソフトテニス中心だった。中学、高校時代は本当にソフトテニスをするのが楽しかった。中学では週に7日、高校でも週に6日練習をしていたが、全く苦にならなかった。学校での練習だけでは足りず、家に帰ってからソフトテニスマガジンを読んだり、素振りをしたり、イメージトレーニングをしていた。中学、高校で在籍した部活動にテニスを教えてくれるコーチはいなかったが、自分でもっと強くなるためにはどうすればよいのかを考えて練習し、着実に力をつけていった。中学時代には埼玉県大会でベスト32が最高であったが、高校時代には東京都大会で1度優勝できるまでに成長した。今になって考えると、中高時代にはどうすれば強くなれるかを考えて練習し、力をつけて試合で勝ち、さらに上を目指して練習するという良いサイクルが自然とできていたからこそどれだけ練習してもソフトテニスを楽しく続けられたのだと思う。

 

1年間の浪人生活を経て入学した一橋大学でも私は体育会でソフトテニスを続けることになった。入部を決めた理由は、テニスを続けたいと漠然と思っていたものの、テニスサークルは雰囲気が自分には合わなそうだったからという消極的なものであったと記憶している。1年生からリーグ戦に出場させてもらい、春リーグこそ41不戦勝だったものの、秋リーグは全勝、2年生も春リーグ・秋リーグともに全勝することができた。しかしこの過程で、もっと強くなりたいという向上心は次第に無くなり、リーグで勝ち、チームに貢献できればそれでいいと考えるようになっていた。2年生の頃からは部員へのアドバイスを積極的に行うようになった。表向きはチームの実力を底上げするためのアドバイスであったが、実際には自分が練習して上手くなることから逃げていたのだと思う。テニスは楽しくなくなり、義務感でテニスをするようになっていった。

 

そんな調子で貴重な時間を無駄に過ごし、4年生の9月、最後の秋リーグまであと1ヶ月という時期に自分に異変が起きた。私は4年生の春リーグからシングルスを任され、秋リーグもシングルスで出場することになっていたのだが、この大事な時期になって他校との練習試合でいつも通りやれば勝てるはずの相手に負けてしまうことが頻発したのである。いつも通りのことに注意して、いつも通りプレーしているはずなのにミスが出てしまい、自分でもどうすればよいのか分からなくなってしまっていた。そんな時に、1学年下で当時主将だった瀬口から「普段後輩の面倒を見てもらって感謝しているのですが、小泉さんには最後のリーグ戦も全勝してほしいので、調子が良くないのなら後輩を使ってどんどんシングルスの練習をしちゃって下さい。」という言葉をもらった。私はこの言葉にドキッとさせられた。自らを追い込み、強くなることから逃げてしまっていたツケが今になって回ってきたのだと思った。それからリーグまでの1ヶ月間は心を入れ替え、とにかく自分が少しでも上手くなること、そして絶対に全勝するということを目標に練習に励んだ。実際に自分はどうすれば強くなれるかを考えて練習してみると改善できることや新たな発見がたくさんあった。課題を見つけ練習し、改善するというサイクルが始まり、またテニスが楽しくなった。大学1年生の時からこれができたらどれだけ上手くなることができただろう。

 

そうして迎えた最後のリーグ戦。チームとしては23敗で何とか降格を免れ、個人としては目標としていた全勝を達成することができた。特に記憶に残っているのは第5戦の埼玉大学戦である。2番手まで試合が終わり11敗、相手のシングラーはここまで4勝している強敵、そしてこの試合に自分が負けたらチームは7部降格の可能性が高いという状況だった。自分で言うのもおかしいが、この試合はお互いが持っている力を全て出した、白熱した試合となった。両校の応援も熱が入っているのが試合をしている私にもよく分かった。ポイント間に一橋のベンチに目を移すとそこには今まで一緒に練習してきた男女の現役部員が必死に応援してくれている姿、そしてお世話になった先輩方の姿があった。恐らく現役最後となる試合をこんな形で迎えることができるなんて幸せだなと思ったのを覚えている。試合は④-2でなんとか勝つことができた。この試合に勝つことができたのはリーグ1ヶ月前からもう一度強くなるために練習することができたからだと思う。そのきっかけを作ってくれた瀬口には感謝している。

 

後悔することも多い大学4年間のソフトテニス部での活動だったが、ソフトテニス部に入ったこと自体は全く後悔していない。この部に入り、チームで目標を目指すことの難しさ、達成した時の嬉しさ、自分の限界を決めずに努力し続ける大切さなど多くのことを学ぶことができた。そして本当に良き先輩、同期、後輩に出会えたと思う。みなさん本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

 

最後になりますが、関さん、起橋さん、倉林さんをはじめとするOBOGの皆様には有形無形のご支援をいただき本当にありがとうございました。今後は私も一人のOBとして後輩達を応援していきたいと思います。