長崎から考える地方創生
北島剛(平成17年卒)
大学卒業後、九州を販売エリアとする西日本新聞社に勤めて11年になる。長崎での記者生活は4年目で、現在は長崎県庁を拠点に県政全般を担当している。取材対象には、長崎で弁護士活動をする部の一つ後輩の山本真邦君もいて、不思議な縁が続いている。佐賀県出身のため、長崎弁にもほとんど違和感はなく、逆に東京の学生時代の友人に会うと「なまっているね」と言われることのほうが多い。
長崎県は九州で最も人口減少が進んでいる県だ。現在の人口は137万人。1960年からの年間で万人減った。特に社会減に歯止めがかかっていない。県は全国平均より低い1人当たり県民所得を上げることで、人口減少の抑制を図ろうとしているが、大きな効果はまだ出せていない。地方創生が叫ばれる中、長崎からその在り方を考えてみる。
長崎県は日本で最も多い971の離島がある。私は離島にも取材に向かうことがあるが、印象に残っているのが韓国との国境が近い対馬だ。ここには、都市部から移住して地域おこしに取り組む「島おこし協働隊」がいる。東北大大学院の研究者だった女性は、対馬の限界集落に入り、地域住民を巻き込んでイベントを企画。都市部から人を集め、地域に活気を与えた。3年の任期満了後も対馬に残り、一般社団法人を設立。地元の男性と結婚した。彼女は「自然あふれる対馬は魅力的なフィールド。年収200万円でも余裕で暮らせる」と対馬の良さを語る。
価値観の転換―。これが地方創生の一つのキーワードではないだろうか。地方が都市と同じものをそろえても、人を呼び込む決め手にはならない。都市部にない地方の魅力をいかに打ち出せるかが大事だ。情報技術(IT)の進化で、地方にいながらビジネスを興す環境は整いつつある。地方から都市部に向かう人がいる一方、都市部から地方への移住も増えている現状がある。
記者の仕事は何か。取材した記事を通して地域課題を読者に提示して、一緒に解決策を考えていくことが一つ挙げられる。九州の地で、地域とともに歩む記者になることを目指し、今日も長崎の街を駆け回る。