巻頭言 ごあいさつ
一橋大学大学院社会学研究科 教授 尾崎 正峰
諸先輩方には、一橋大学ソフトテニス部の活動に対して、日頃より有形無形さまざまなご支援をいただいておりますこと厚く御礼申し上げます。
今後とも、引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
2016年も年の瀬を迎え、この一年を振り返ってみますと、さまざまな出来事が日本で、そして世界で起こったことにあらためて気づかされます。
スポーツの領域では、リオデジャネイロ・オリンピック、そして、日本選手のメダル獲得にまず指を屈する方も多いと思われます。私個人としては、オリンピックの後に開催されたパラリンピックに新たな時代の息吹を感じ取ることができました。パラリンピックに関するテレビ放送の視聴記の執筆を依頼されていたこともあり、いつにも増して競技場面をはじめとして、大会に関連する放送を視聴することで感じることが多々ありました。
パラリンピアンたちの「“障害があるのに頑張っている”ではなく“アスリート”としてみてもらいたい」というかねてからの思いが少し形を取って現れていたのではないかという点です。この背景には、ドイツの義足の走り幅跳びのマルクス・レーム選手が健常者をもしのぐ記録を出しているように、パラリンピアンがオリンピアンに比肩するほどの競技レベルに達していることがあります。
競技そのものの場面以外では、『世界』(岩波書店)2016年2月号に執筆の機会を得て、オリンピックをめぐる課題は山積していますが、一見、縁遠いと思われている地域における日常生活の中で、いつでも、どこでも、だれでもがスポーツを享受できる条件の整備が喫緊の課題であるとの私見を述べさせていただいたこともあり、障害のある人々がスポーツをするための環境整備が、ヨーロッパやアメリカなどと比べると日本は未だ不十分であることをあらためて感じざるを得ませんでした。
現在、日本で公式に「障害者」として認定されている人の割合は16人に1人であり、超高齢社会ゆえに何らかのサポートを必要とする人々の数も大きなものとなっています。これらを総じてとらえてみたとき、4年後の2020年に向けて、スポーツというひとつの文化を通して、社会を、インクルーシヴ、そして、ダイヴァーシティ(多様性)をキーワードとしつつ、どのように構築していくのかが問われていると思われます。